ローコスト住宅の「ゆきだるまのお家」で建てた自宅ですが、ひとつだけ、思いきって贅沢をしました。
それは、エコカラットです。
装飾というより、機能性を求めて、リビングの壁のほぼ全面(腰高より上の部分)にエコカラットを貼りました。
期待していた効果は、ずばり「消臭」「空気清浄」です。
なぜ少ない予算の中で、わざわざエコカラットを使おうと考えたのか。
前編では、当時、私が判断基準にしたエコカラットのメリット・デメリットについて、まとめました。
後編では、実際に「ゆきだるまのお家」で施工した費用と、入居後の感想についてお伝えします。
空気清浄機を使いたくない
自宅では、小型犬3匹を居間で放し飼いにしています。
日中はお留守番ですから、室内トイレのシートを排泄のたびに変えることが難しいです。
つまり、においが気になるのです。
しかも、私自身はアレルギー体質です。
建物によっては、新しい建材に触れて、頭痛が起きることもあります。
有害物質・刺激物質は、少なければ少ないほどいいわけです。
簡単に解決するなら、空気清浄機です。
でも、空気清浄機は、電気コードとコンセントで電源を取りますよね。
その部屋では、犬が放し飼いです。
もし、電気コードを噛んだら・・・?
※仔犬の頃に、ノートPCの電源コードを噛み切られました。
だからと言って、空気清浄機を棚の上に置きたくありません。
札幌近郊は、割に頻繁に、地震が起きるのです。
2年ほど前の胆振地域地震でも、近隣地域では被害が出ました。
そこで、目星をつけたのがエコカラットだったのです。
エコカラットとは
ひとことで言うと、LIXIL製の壁に貼る室内用タイルです。
一般的なタイルと違うのは、消臭や空気清浄などの特長を持っていること。
代表的な機能はこの3つです。
- 消臭
- アレルゲン物質の吸着・低減
- 湿度を整える調湿
最も惹かれたのは、消臭効果でした。
メリット
消臭効果
消臭効果を狙う建材として、機能性壁紙や珪藻土の壁という選択肢もあります
ただ、この二つを選択しなかったのは、理由があります。
まず、消臭能力について、エコカラットの有効性を示すデータがあったこと。
【試験方法】試験体(30mm角)をにおい袋(3l)に入れ、ヒートシールを施した後、空気ベースの各種においガスを封入し、室温下で5時間放置します。におい袋内のガス濃度の変化をガス検知管で測定します。
※ 試験体は予め湿度65%で恒量化
要は、においの源を5時間放置した後、どれくらい残っているか(残存率)を計測したデータです。
もちろん実験の場は、一般家庭の家屋ではないので、数値そのものは絶対値とはなりません。
ただ、3つの建材についての機能比較としては、結果十分です。
同じ条件下で効果に差が出ましたので、自分としては納得しました。
そうそう、LIXILショールームでは、小瓶にコーヒー豆とエコカラットを入れて展示してありました。
エコカラットで消臭できる、という実験ですね。
完全に無臭とはいきませんが、エコカラットを入れていないものより、確かに香りは弱かったです。
お香やルームフレグランスを常時使うような場合は、お勧めできない壁材です。
なんて、ショールームの販売員さんも話していました。
アレルゲン物質の吸着・低減
【試験方法】(一財)日本建築センター 新建築技術認定事業「室内空気中の揮発性有機化合物汚染 低減建材認定基準」の試験方法に準拠し、小型チャンバーによる定常法にて試験。ADPACシステムを用い(温度28°C・相対湿度50%・換気回数0.5回/h・試料負荷率2.2 (温湿度・換気率一定) m²/m³)で、ホルムアルデヒドガスを定常的にチャンバー内に流して濃度を測定します。※ ISO 16000-23、ISO16000-24、JIS A 1905-1の試験方法にも準拠しています。
アレルゲンの吸着や低減させる効果も魅力でした。
私自身がアレルギー体質で、新しい建物に入ると、頭痛を起こすことがあります。
それから飼い犬のことも、心配の種でした。
同居していた前夫はヘビースモーカーで、室内でも喫煙していたのです。
それも、部屋中のどこでも、です。
当時、犬たちはいつも目ヤニが出ていました。
自分で犬を飼うのは初めてで、実はあまり気にとめていませんでした。
でも、前夫が家を出てから、目ヤニはほとんど出なくなったのです。
タバコの煙、つまり有害物質が悪さをしていたんだなと、思います。
今となっては、心が痛みます。無知って、怖いですね。
自分と犬のために、有害物質は取り除けることが一番です。
消臭とアレルギー物質を吸着する仕組み
エコカラットには、全体に無数の細かな孔が開いています。
その孔の大きさは、だいたい1ナノメートル(1mmの百万分の一)です。
ここを空気が通り抜けていくときに、臭いの元や有害物質を吸着するのですね。
このエコカラットのこの小さい孔こそ、優れた空気洗浄力の秘密というわけです。
細かい孔があるというのは、エコカラットの材料である「多孔質セラミック」の特長です。
これをさらにLIXILが改良し、機能性を高めたということですね。
調湿機能
私はそれほど関心はなかったのですが、エコカラットの調湿機能も、この空気孔によって実現しているそうです。
- 湿気でムシムシしていれば、空気孔から水分を吸着。
- ヒリヒリ乾燥するなら、蓄えていた水分を放出。
と、こういうわけです。
LIXILによると、一般的な珪藻土の壁と比べ、5~6倍の調湿効果だとのデータもあります。
吸着された物質はどこへ
臭いの元や有害物質が、エコカラットの細かい空気孔で吸着されることはわかりました。
でもね。
その吸着した有害物質は、どこにいくのでしょう。
ショールームで訊ねたり、別の機会にLIXILの社員さんに聞いたところ、こんな事情でした。
- エコカラット自体が、アレルゲンフリー。
- 実験では消臭効果があり、空気中のアレルゲン物質も低減した。
- エコカラット内のたくさんの小さな孔を通過するうちに、吸着された物質は極小化。
- 孔が調湿をしながら、空気を吸い込んで吐き出すことを繰り返すなかで、わずかずつ有害物質も排出する。
- 有害物質を排出しても、量が微量ずつなので、空気中の清浄度は保たれる。
- 狭い密室の場合は、エコカラット内で有害物質が飽和する可能性はあるが、生活の場ではほぼあり得ない。
客観的な効果については、機械で強制的に作動する空気清浄機や脱臭機には及びません。
でも電気は使わないし、フィルター交換の必要もない。
エコカラットは、穏やかな空気清浄・脱臭システムなんですね。
デメリット
水に弱くて、水拭きできない
エコカラットの特長のひとつに、調湿機能があります。
それは、水分を吸い込む性質があるということです。
つまり、コーヒーや泥水、絵の具など色水がかかると、染みこんでしまうんですね。
キレイにしようとしても、同じ理由で、洗剤が使えません。
水拭きも、汚水が染みこむので難しいです。
※ちょっと割高ですが、最新シリーズのエコカラットプラスなら、水にも強いです。
ただ、ほとんどのエコカラットは、静電気が発生しにくい形状になっているそうです。
これはつまり、ショールームの販売員さんによると、
ホコリを寄せつけにくいから、神経質に掃除をしなくても大丈夫
だそうです。
天井に貼れない
エコカラット自体に重さがありますから、貼り付ける面には強度が必要です。
新築の場合は、設計段階から相談した方がいいですね。
また落下したときの損害リスクもあり、天井には貼れないとLIXILから説明を受けました。
臭いは上に登っていくと聞きましたので、天井もエコカラットにしたかったのですが、これは断念しています。
インテリアの幅が狭くなる(固定化される)
エコカラットはタイルですから、固いし頑丈です。
つまり、一度施工したものを剥がしたり、あるいは、上から画鋲で絵を留めるなんてことが難しいのです。
一旦エコカラットを取り付けたら、次はリフォームするまでそのままというわけです。
ただし、割高にはなりますが、額縁のようなものにエコカラットをはめて、それを壁に設置する方法もあります。
それなら、壁に直接施工するよりも、自由度は効きますね。
また、絵画などを取り付けるように、レールやフックかけも別売りであります。
これらを使うなら、追加の費用や割高感はありますが、インテリアは楽しめます。
私の場合は、それほど興味がなく、何もしませんでした。
何かをぶつけると、欠ける
これもセラミックタイルの特性ですが、柔軟性のない固い素材です。
つまり衝撃を受けたら、伸びる・曲がるではなく、折れる・欠けるのです。
ショールームで聞いたところでは、
掃除機や家具をうっかりぶつけただけで、割れたり、欠ける可能性があるそうですね。
また、エコカラットのデザインによっては、表面がザラザラしています。
これで大人でもうっかり肘を擦ったりして、ケガすることもあります。
これを事前に聞いたので、犬の届く位置には、エコカラットを貼りませんでした。
費用が高い
エコカラットは、壁紙と比べて、元々高価です。
その上、消臭や有害物質の吸着など、機能性に期待する場合は、ある程度の施工面積が必要です。
目安としては、
12畳の居間で、4~6㎡が必要 (LIXIL調べ)
同じ広さの壁紙と比べたらよくわかりますが、10倍以上の価格差がつくこともザラです。
しかも、壁紙よりも手間がかかるため、施工費用も高額になります。
エコカラット代と施工費用を合わせると、壁紙の場合に比べ、20倍以上の価格になることもあります。
「おしゃれな空間にしたい」だけなら、狭い範囲のエコカラットでも楽しめます。
でも、機能性を求めるとなると、
かなり高いけど、いいですか?
こう、担当設計士さんに念を押されていました。
結局、決め手になったのは
ローコスト住宅を選択するくらいですから、予算には余裕はありません。
それでも、リビングの壁のほぼ全面にエコカラットを施行した決め手は、こんなことでした。
- 費用の点で、手の届く範囲の壁としては、消臭・有害物質の低減能力が一番高い。
- 消臭・有害物質の低減能力は、エコカラット自体を破損しない限り、ずっと続く。
- 効果がいまひとつなら、その時点で空気清浄機を考える。でも、家を建ててから、エコカラットを施工するのは大変。
- 高価だけど、全体の予算内には収まった(次回の記事で詳しく)。
では、実際の施工面積や費用について、ローコスト住宅「ゆきだるまのお家」ではどうだったのか。
次回【後編】に続きます。
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