札幌で土地を探しているとき、あぁ高いなあとため息をつく毎日でした。
そんな中で、たまにですが、妙にお安い土地があるのです。
素人目に見ても、周囲の相場より格段に安いときもあります。
そのひとつは、「セットバックが必要な土地」でした。
セットバックの特徴を理解していて、設計がうまくいけば、土地に関わる費用がかなり浮きます。
それくらい大きな価格差が出ることもあります。
でも、私は結局購入しませんでした。
今回はセットバックとは何かと、購入をやめた理由をまとめました。
土地セットバックについて
不動産屋さんの店頭や、ネットで土地売買の情報を見ているとき、すみっこの方に「要セットバック」とか、「セットバック済み」と書かれているのを目にしたことはありませんか?
セットバックが必要な土地は安いのですが、それには理由があるのです。
土地セットバックとは?
敷地に面した道路の幅は3mだけど、建築基準法上では4m必要。
だから、その差の1mは、敷地内だけど建築許可は出さないよ。
その部分を避けて、家を建ててねってこと。
これは、お世話になった不動産屋さんの説明です。
当時の私がメモしていたままの言葉です。
つまりセットバックが必要な土地とは、
- 建築基本法が規定する幅よりも狭い道路に面した土地
- 道路の幅を確保するために、接する敷地の一部も道路とみなす
- 道路とみなされた土地には、建築許可が下りない
- 仕方ないので、道路と接した部分から奥に移動した位置で、家を建てる必要あり
こんな土地です。
建築基準法では、原則として、道路は幅4m以上(地域によっては6m)と決められています。
日当たりや風通しなど、住宅地としての環境確保もそうですが、
一番の目的は、緊急時に救急車や消防車が通行しやすくするためです。
雑居ビルが立ち並ぶ大都市の繁華街など、火災の際に救急車両が近づけず、救助が遅れたというニュースがたまにありますよね。
あれを防ぐために、住宅地では道路で確保すべき幅が決められているのです。
斜線規制の緩和(もうひとつの土地セットバック)
私が見かけた要セットバックの土地は、いずれも「道路の幅を確保すること」が目的のものばかりでした。
でも場所によっては、「斜線規制の緩和」目的で、セットバックが必要な土地もあります。
つまり、こうです。
住宅地によっては、隣地や道路からの距離によって、建物の高さが制限されます。
これもやはり日当たりや風通しの確保が目的です。
道路のキワから、絶壁のように住宅が建ち並べば、圧迫感がありますものね。
【斜線規制に引っかかる状態】
【斜線規制の回避で、セットバックする場合】
この「斜線規制」に沿って、道路から少し離れた位置に住宅を建てたり、あるいは、2階部分だけを敷地奥にずらすことも、「セットバック」と呼ばれます。
これは、道路幅を確保するためのセットバックとは別のものです。
土地そのものの規制内容も全然違います(道路幅セットバックの方が厳しい)。
まぎらわしいのですが、建築関係のみなさんにはもちろん常識らしく、設計段階で何度か耳にしました。
覚えておかれると、役に立つと思います。
私は知らなくて、ちょっと混乱しました。
以下、この記事では、「道路幅に関するセットバック」について書いています。
セットバック土地の幅について(道路の幅)
【道路の幅は、これだけ必要の図】
建築基本法の規定では、道路の中心から、両側にそれぞれ2mで、合計4mの道幅が必要です。
これが基本的な考え方です(指定された道路では6m)。
道路の幅が足りない場合、接する敷地の一部を道路としてみなすために、セットバック(道路から離れた位置に住宅を建てる)するわけです。
運よく道路の両側に住宅地(敷地)がある場合は、それぞれで負担し合うことになります。
図のような状態であれば、道路は3m幅なので、不足分は1mです。
でも両側の敷地で分担するので、セットバックに必要な敷地の幅は、50cmですむのです。
なお、対岸に住宅用の敷地がない場合は(河川や線路など)、一方の面に接した敷地だけでセットバックを行うことになります。
セットバックが必要な土地とひとくちに言っても、状況によっては、それほど敷地を侵食されないケースもあるのです。
セットバックが必要な土地のデメリット
お安く売られていることの多い「セットバックが必要な土地」ですが、その理由はデメリットの多さでしょう。
セットバック土地の部分は、何にも使えない
セットバック部分の敷地は、何も建てられません。
住居はもちろん、門や生垣もNG。
花壇もダメです。
駐車場にすることもできません。
あくまでも、道路の一部とみなされるのです。
なお、容積率や建蔽率は、セットバック部分を除いた敷地面積で算出します。
セットバック部分が大きいと、見た目よりも「狭い土地」に、「小さな家」しか建てられないことになります。
自分の土地でありながら、自分の自由にならない。
何だか理不尽ですが、それが「セットバックが必要な土地」というものなのです。
セットバック土地のための工事費用が必要
必要なセットバックを実施するための測量や土地整備には、費用がかかります。
それは通常は、土地の持ち主の負担となります。
2018年頃に私が不動産屋さんに聞いた限りでは、
「10~40万円くらいかな」
とのことでした。
ただ、高低差のある土地だったり、敷地が広い場合は、もっと高額になるでしょう。
土地セットバックは拒否できない
正確に言うと、セットバックを拒否して住宅を建てようとしても、建築許可が下りないのです。
自費でセットバックを整備し、しかも、住宅用地として使えるのは、セットバック部分を除いた面積。
セットバックが必要な土地を買う場合は、費用対効果を慎重に考える必要があります。
札幌市では、ある程度の幅以下の道路には除雪が入らない
札幌市の決まりで、基本的には幅8m以下の道路には、行政の除雪車が来てくれません。
セットバック部分を含めて、やっと幅4mになる道路。
実際に除雪されるかどうかは、場所によるそうです。
セットバックが必要な土地を検討する場合は、除雪の有無について、事前に行政に確認する方が無難です。
これは札幌市に限らず、雪国ならどこでもそうなんでしょう。
セットバックが必要な土地のメリット
唯一、絶対的なメリットは、
安いことです!
私は巡り合いませんでしたが、セットバック部分は僅かにも関わらず、全体の値段が大きく下がる土地も、ときどきはあるそうです。
「セットバック」と記載があるだけで、人気がなくなるそうなので、よく確認すれば掘り出し物もあるかもしれませんね。
購入の場合に注意すること
運よく、「掘り出し物」の要セットバック土地が見つかり、購入を検討する場合、気をつけるべきことがあります。
土地セットバックの必要範囲は、慎重に確認を
道路の中央線が、本当に道路の真ん中を通っているとは限りません。
積雪・雪どけを繰り返すうちに、だんだんと曖昧になってくる場合があるのです。
測量士や行政担当者、向かいに敷地があるなら、その持ち主、不動産業者などの立ち合いで、セットバックの範囲を確認する作業が必要です。
人手が多いので、スケジュール調整だけでもけっこう大変でしょうね。
非課税の申請手続きが必要
自治体によっては、セットバック部分が非課税になる例もあります。
ただし、該当する場合も、自分で申請に行く必要があります。
古屋が建っていても・・・
古屋付きの土地の場合です。
セットバックに該当する場所に、既に古屋が建っていたとしても、同じ場所には新しい住居は建てられません。
「前の住人の自宅は建ってたじゃん」
これは通らない理屈なのです。
古屋を壊して撤去する分、セットバックの整備に余計な費用がかかります。
セットバックが必要な土地は、割安・お得なのか?
私が自分のために土地を探した経験では、残念ながら、割安・お得感のある「要セットバック土地」には、巡り会えませんでした。
でも、相談していた不動産屋さんでは、
年に何度かは、セットバックが必要でも、本当にお得な土地が出てくる!
こんな話も聞きました。
数件の不動産屋で同じように言われたので、まあ、そういうこともあるのでしょう。
ちなみに、セットバックの要否や面積については、不動産広告に記載が義務付けられています。
気にしておくと、もしかしたらラッキーがあるかもしれませんね。
その場合も、
- セットバックを抜いた面積でも価格にお得感があるか
- セットバック費用はどれくらいか
- 除雪が入れる道路か
これはチェックすることをお勧めします。
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