【札幌のローコスト住宅】断熱材にグラスウールを使うのは危険なの?

グラスウールの危険性 ローコスト住宅とは
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札幌で「暖かい家」を建てるとなると、避けては通れないのが断熱材の話です。

これは大手ハウスメーカーの注文住宅でも、地元工務店のローコスト住宅でも同じです。

 

いいえ、ローコスト住宅の方がより重要かもしれません。

なにせ予算に余裕がないので、断熱材だって高級なものは難しいのです。

 

安くて普及している断熱材と言えばグラスウールですが、個人的にはあんまり良い印象がありませんでした。

もう40年以上前の話ですが、グラスウールにキノコが生えたという事件を耳にしたことがあったのです。

俗にいう「ナミダタケ事件」ですね。

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何となく、グラスウールはいやだな~と考えていたのです。

 

ところが、なかなか思うようにはコトは運ばないものです。

 

私の自宅は、藤城建設の「ゆきだるまのお家」というローコスト住宅です。

ウリは「超ローコスト住宅」なのに、Q値 1 W/(㎡・K)以下の高断熱・高気密住宅。

 

ここでお願いすれば、住宅ローンを組まず「暖かい家」が建てられるとわかったのです。

つまり予算ギリギリってわけです。

 

アラフォーおひとりさまですから、借金はできるだけ避けたい。

どうしても藤城建設で建てたい。

 

でも、断熱材は、おもいっきりグラスウール使用なのです。

ダブル断熱の施工ですが、内断熱(充填断熱)の部分は、ほぼグラスウールのみ。

 

どうしようか。

とても深刻に悩みました。

 

まあ、結局は自分の中で折り合いをつけ、今は「ゆきだるまのお家」で暮らしているというわけです。

今回は、「グラウウールって怖い」と思っていた私が、どのような理由で気持ちを切り替えたのかをまとめました。

 

 

グラスウールとは

ゆきだるまのお家グラスウール

※ピンクの部分がグラスウール

 

【住宅によく使われる断熱材】

繊維系 無機繊維系 グラスウール 「ゆきだるまのお家」(藤城建設)・太平ホーム・ロゴスホーム・専門職組合(株)・「LIV STYLE」(三五工務店)・匠建コーポレーションほか
ロックウール 「ゆきだるまのお家」(藤城建設)・「LIV STYLE」(三五工務店)・匠建コーポレーションほか
木質繊維系 セルロースファイバー 専門職組合(株)ほか
インシュレーションボード
発泡プラスチック系 ビーズ法ポリエチレンフォーム
押出法ポリエチレンフォーム
ウレタンフォーム 「COZY」(ジョンソンホームズ)・「チャレンジ999」(豊栄建設)
高発泡ポリエチレンフォーム 「ミニプロト」(アートホーム)
フェノールフォーム(ネオマフォームなど) 太平ホーム・「Roots/ムクムクポシェット」(ジョイフルホーム)・バリューホームほか

表作成:yukidaruma(記載したハウスメーカー・工務店はイチ例です)

 

グラスウールは、ガラスから作られる断熱材です。

製造方法は、綿あめの作り方を思い浮かべるとわかりやすいです。

溶けたガラスを遠心力で吹き飛ばして繊維状にからめたあと、接着剤で形を整えて完成です。

 

細かな繊維で絡み合ったグラスウールの中に、たっぷり含まれた静止空気。

これが熱を伝わりにくく(熱伝導率を低く)するわけです。

 

物質の熱伝導率一覧 【単位:W/(m.K) 】

物質 温度【℃】 熱伝導率【W/m.K】
0 403
アルミニウム 0 236
0 2.2
コンクリート 0 1.6
10 0.582
塩ビニール・樹脂 0 0.17
乾燥木材 18~25 0.15~0.25
乾燥した空気 0 0.0241
アルゴンガス 0 0.016

計算・表作成:yukidaruma(参考:WIKITECHエンジニアリング・化学技術情報

 

なにしろ、「静止した空気」は最強レベルの断熱性能を誇りますからね。

ダウンジャケットが暖かいのは、ダウン(羽)にたっぷり含まれた空気層で、外気温を遮断するからです。

 

世の断熱材とは、「いかにたくさんの静止空気(ガス)を含む」かが性能の基準のひとつ。

グラスウールなど繊維系のものだけでなく、プラスチック由来の断熱材も同様です。

またダブルガラスやトリプルガラス窓の断熱性能も、この原理を利用しています。

 

グラスウールのメリット

 

近年グラスウールは全国に普及し、断熱材の中ではシェア率5割以上とのデータもあります。

ここまで多く使用されるには、やはりちゃんと理由があるのです。

 

費用が安く、コストパフォーマンスがいい

グラスウールは、「費用の割に」高い断熱性能を発揮します。

現実には、グラスウールよりも高性能の断熱性能は、いくつも存在します。

 

例えば、ネオマフォームに代表されるフェノールフォーム断熱材。

外張り断熱で多用されるプラスチック系断熱材ですが、断熱性能としてはピカイチです。

でも、グラスウールに比べて非常に高価なのです。

 

ローコスト住宅でフェノールフォームを使いたくても、費用の問題で、なかなか厚みは出せません。

一方グラスウールは安価ですから、十分な断熱性能を得られるまで「分厚くしても」、びっくりするような値段にはならないのです。

 

燃えにくい

グラスウールの原料はガラスですから、基本的には燃えません(溶けますが)。

また高温にさらされても、有毒ガスが発生することもありません。

 

燃えないということは、隣家が火事になっても、延焼を防ぐ効果があるってことです。

もちろん、室内で発生した火災が周囲に燃え広がるのも、食い止める作用が期待できます。

 

私の場合は、隣が実家です。

絶対に起きてほしくないですが、でももし自宅が火事になってしまったら、せめて延焼は防ぎたいです。

燃えにくいという特徴は、なかなか魅力がありました。

 

身体に優しい

 

グラスウールは、健康被害の少ない断熱材です。

 

シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドは、「ごく微量」とJIS規格で認定されています。

建築基本法でも、使用量の制限はありません。

 

また発がん性物質についても、「ヒトに対して発がん性に分類しない」と国際がん研究機関(IARC)で証明されています。

 

 

え、でもアスベストみたいなことになんないの?

細かい繊維だし、肺に溜まったりとかさ。

 

↑こういうの必要なんじゃ・・・。

 

当時職場の後輩に言われましたが、これは間違いです。

アスベストは天然鉱物繊維の一種で、一昔前まで建材としても一般的でしたが、発がん性が指摘されていますね。

吸い込めば肺に蓄積されて、肺機能障害を引き起こすことが分かっています。

 

でもグラスウールは、ガラス製の人工繊維で全く別のものです。

グラウウールにアスベストが混入することも、製造工程が重ならないので、まずあり得ません。

 

また繊維の形も異なっているので、万が一グラスウールを吸い込んでも、肺に吸収されることは考えにくいです。

小さくて枝分かれしているアスベスト繊維に比べ、グラスウール繊維は大きい棒状で、肺の奥まで入っていかないし、侵入しても肺に留まらず排出されます。

 

そもそも室内に露出しませんから、住人が触れる機会もあまりないのです。

もちろん工事の職人さんにも、健康被害は生じません。

 

環境への負荷が低い

 

グラスウールの原料となるガラスは、ほとんどがリサイクルガラスです。

沖縄の工芸品「琉球ガラス」も、再利用されたガラスを使用して作られますが、グラスウールも同じです。

家庭から出るゴミだけでなく、古屋を解体後に出た古いグラスウールなども材料に使えるのです。

 

私は、エコに関心があるタイプではありませんが、気がついた範囲で、環境にやさしい選択肢を選びたいとは思います。

 

経年劣化しにくい

 

グラスウールは、主原料がガラスです。

ガラスは、とても安定した性質で、経年劣化しにくいのです。

吸湿性もありませんから、それ自体が腐敗することもないです。

 

発泡プラスチック系断熱材は、要するにプラスチックです。

高温多湿で変形したり、劣化しやすいのは事実なのです。

 

劣化しにくく改良された発泡プラスチック系断熱材も存在しますが、それは高価なんですよね。

ローコスト住宅に使用するのは、ちょっと大変です。

 

グラスウールはシロアリに食べられることもなく、湿度や温度変化で変質することなく、地震でも(建物が倒壊しない限り)変形しません。

 

綿あめを思い浮かべてくださいね。

ふわふわで伸縮性があるのは、グラスウールも同じです。

 

木造住宅を支える木材は、季節や年数によって収縮します。

これはもう仕方がないことです。

 

でもグラスウール自体に伸縮性があるので、施工された空間の大きさに合わせて、ある程度は伸び縮みすることができるのです。

固形の発泡プラスチック系断熱材は、それが難しい。

ひび割れるなどして、断熱性能を保てないことがあるのです。

 

えっ、ちょっと待って!?

じゃあなんで、キノコが生えたりするの?

(例:ナミダタケ事件)

ナミダタケの画像

床下にびっしり生えたナミダタケ:画像はお借りしました

 

それ、当然の疑問です。

私もそう思いました。

 

ネットで検索すると、

グラスウールは、湿気に弱い

水分を溜めるから、数年でズレ落ちるときもある

 

こんな風に書かれているサイトもあります。

 

グラスウールのデメリット

「水に弱い」の真相

グラスウールは、細かいガラス繊維の固まりの中に、大量の「静止空気」を蓄えています。

これが断熱性能を発揮するわけですが、水分が入り込んでくると、空気が押し出されてしまいます。

 

グラスウール自身は、水に濡れたり、湿気が溜まるとそれを自力では追い出せません。

吸湿・調湿性能がないからです。

加えて、ガラス自体は非常に安定した物質ですから、「水に溶ける」こともない。

ただただ、「水分を蓄え続ける」わけです。

 

これ、結露ですよね。

 

つまり、グラスウールが水に弱いというより、「施工不良が問題」なのです。

 

それは、ナミダタケ事件の発生メカニズムからも見て取れます。

 

気密性の低い住宅では、室内の暖かく湿った空気がグラスウールに侵入する。

グラスウール内で、湿った空気が巡回し、外壁付近で冷やされ、水分が生じる(結露)。

グラスウールに結露が溜まり、その水分は、接している建材・床材を湿らせ続けた。

そこにキノコ(ナミダタケ)が大量発生し、菌床となった建材を破壊。

床が抜けた。

 

ナミダタケとグラスウール

ナミダタケが大量発生して朽ちた木材:画像はお借りしました

 

あ~あ。

これが新築後2~3年で起きたと言いますから、悲惨です。

 

グラスウールについては、湿気を流入させないような、しっかりした施工が必要と言えるでしょう。

 

グラスウールの施工には精度や技術が必要

このナミダタケ事件も影響し、現在では、グラスウールと気密シート・防水シートはセットです。

またグラスウールは、壁一面の充填断熱として使用されることが多く、ぴったりと過不足なく詰める技術が必要です。

押し込みすぎても、足りなくても、偏りやすき間が生じて断熱性能は低下してしまうからです。

 

この「精度の高い施工技術」、これがグラスウールを使用する難しさだと感じました。

 

私の家を建てるときの話です。

設計段階では、断熱性能が高く、気密性の高いであろうことは容易に確認できました。

客観的な計算値で表わすこともできるし、藤城建設のことも(担当の設計士さん)信頼していたのです。

 

でも実際に建てるのは、大工さんたちです。

設計や計算通りの住宅性能かどうかは、彼ら次第なのです。

 

施主が毎日現場に足を運んで、チェックしたらいいよ!

 

ネット上では、そんなアドバイスもありました。

しかし建築中は遠方に住んでいたので、それはちょっと難しい。

なにしろ、高速道路を飛ばして2時間くらいです。

頻繁に通うことは諦めました。

 

そもそも素人の自分が見て、わかることなど多くないでしょう。

 

そこで依頼したのが、ホームインスペクションでした。

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完璧な断熱材などない

グラスウールそのものは、安価で劣化しにくく、環境負荷も少なく、しかも健康的な断熱材でした。

怖い・危ない建材ではなかったです。

 

ただし施工には技術が必要で、施工不良があれば、目も当てられない事態になるのです。

 

なかなかギャンブルですね!

 

そんなことを担当設計士さんに言いましたら、こう返ってきました。

 

現在は、通気層を設ける工法が主流になって、湿気の問題はとても少なくなった。

そもそもどんな断熱材でも、きちんと施工しないと、効果はないですよ。

 

10年後には再度ホームインスペクションを受けようと考えています。

その時には、グラスウールを断熱材に使って正解だったかどうか、はっきりするはずです。

 

楽しみなような、怖いような。

でも、ちょっとわくわくしますね。

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